夜更けから朝方にかけて、複数の人物たちの生活の断片を垣間見ることができる。
あくまで断片であるのだけれど、細部が描かれなかったところを含めて、リアリティのある部分と虚構としてしか機能しない部分とがうまく接合されているように感じました。
ファミレスで分厚い本を読む少女マリ、トロンボーンを持つひょろっとした男タカハシ、ラブホテルで働くカオル、コムギ、コオロギ。そしてマリの美しい姉エリ。そして、「私たち」。
ほんの数時間の間、以前から知り合いだったり、その場で出会ったりしながら、物語は紡がれていく。
タイトル「アフターダーク」は楽曲の名前からとられているようだけれど、まさに、暗闇の向こうに待つまばゆい朝の予兆に希望を託して生きる人々の何とも知れない惑いや諦め、希望を感じ取ることができた。