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松本隆/風街図鑑~風編~ (JUGEMレビュー »)
オムニバス, 原田真二, 薬師丸ひろ子, 松田聖子, 近藤真彦, 太田裕美 1曲ごとに寄せられた本人コメントが面白い。思い入れの濃淡に思わずほくそえんでしまう。 RECOMMEND
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2006.06.30 Friday 01:56
桜宵 / 北森鴻
ビアバー・香菜里屋のマスター工藤が謎を解くシリーズ第二弾。一作目と比べるとより迫力を増したように感じました。今作では読んでいていかにも現実離れをした設定にも真実味が帯びているせいで、ツッコミをいれたくなることはありませんでした。 後半の三編はブラックな口当たり。心あたたまるいいハナシより苦みが残るほうが好きになってきた・・・大人になったというより世間ずれしてきたという感じですねい。 「十五周年」 この話の主人公である日浦の年齢をいまいち計りかねます。三十代後半から四十代にかかる程度なんでしょうけど、その辺を示唆するようなことをチラリとでも入れてくれたらありがたかったりするのですが。それとも見逃しただけかな? どっちにせよ、最後に至るまで私は彼を60歳手前のおっさんだと思っていたんですが・・・、さすがにそれはないよなァ、と思って読み返してみたら、特にそれほど年老いているような記述はなかったのでした。 「桜宵」 ロマンティックさについては「十五周年」に一歩譲るけれど、これもまあ、二重にも三重にも、ありえなさそうな話ではある。 「犬のお告げ」 この本のなかで一番あっけらかんとしているというか、後味の悪さが淡白。純然たる全き悪意ではないものによって他者を崩壊に導こうとしている。 「旅人の真実」 工藤にとってかなり特別な存在であると示唆されている香月がやっぱり気になります。個人的には工藤の知られざる過去とか、別に明かさなくてもいいんじゃないかと思っているのですが、どうやらちょっとずつその辺を切り出していくような気配を漂わせてます。 がっつりした長編とかこのシリーズには似合わないというか想像ができないのだけど、やるとしたら工藤に現在の不思議な勘をもたらしたような何かが白日の下に晒されるとかそんな感じなんでしょうか。読みたいような読みたくないような。 「約束」 学生時代に限らないけど、昔日によき時間を分け合った人を貶めたりすることだけは避けたいものだけれども。時間と生活の苦渋によって変わる関係は自分には縁がないと切り捨てるだけの自信はさすがにありません。 2006.06.25 Sunday 21:03
地球・精神分析記録〈エルド・アナリュシス〉 / 山田正紀
若くしてデビューし、SF、時代もの、ミステリ、などさまざまなジャンルにわたって百冊以上の本を発表してきた異才。だからこそ、どこから手を出せばいいのか全くもって解らないので、勘で選びました。1977年の作品を復刊したSF作品。とはいえ、古さは感じません。 ユングのいうところの集合的無意識と神話を失い、そのかわりに人間は神話そのものの内部で生きることとなった。〈悲哀‐ルゲンシウス〉〈憎悪‐オディウス〉〈愛‐アモール〉〈狂気‐インサヌス〉という4体のロボットとともに。そして、それらを統べるのはアマゾンの奥地にあるという「デ・ゼッサント」。 その4体を破壊するべく指令を受けた者たちによって語られた物語のなかの謎──「デ・ゼッサント」の正体が、終章にて解き明かされる。 全編にわたって、人間の意識における正常/異常とは何か、つまり自分が狂っているのか、それとも世界が狂っているのか、というテーゼが反復されていくのです。各章ごとにさまざまな都市の様子が描かれ、それぞれの主人公たちが愛するものを喪い、そして神話ロボットを破壊するまでの経緯が面白くてたまりませんでした。特に「愛」と「狂気」はよかった。最初の二章はちょっとSFらしい設定というか、充分に面白いんだけどそれでもまだちょっと物足りなかったりしたのですが。 「愛」だけは主人公が女性なので、一人称代名詞が「あたし」で、文章自体がやけにセンチメンタルというか、いかにも男性が書いた女性の語り口という印象で、芝居がかっていてツボでした。 「狂気」は冒頭から夏目漱石を見上げる猫の視点と同一化する主人公のモノローグだったりして、どういう設定なのか知りたくて、はやく読み進めようと力が入ってしまう。 2006.06.19 Monday 22:19
NEVER SAY GOODBYE -ある愛の軌跡- / 宝塚歌劇宙組
照明が徐々に落ちていき、男役トップのあいさつが開演を告げたとき、自分の意識が異世界に吸い込まれるような感覚に襲われました。そんなのははじめてだったのですが、観劇に慣れてきて、日常から非日常へのシフトチェンジができるようになってきたのかもしれません。
2006.06.18 Sunday 16:18
花の下にて春死なむ / 北森鴻
おいしい食事と気の利いた応対、穏やかで不思議な魅力をもつ「香菜里屋」のマスター・工藤が6つの事件の真相を解く。蓮丈那智シリーズにもこのお店と工藤が顔を出したりしていました。こういうふうに作品を超えて登場人物が行き来する趣向が北森さんはお好みのようですね。 派手さはないけど、心にしみるような味わいがあってよかったです。人が生きるうえでの悲しみとか虚しさとか、ささやかなよろこびとかがうまく表現されていたりもして、工藤の心配りによって幕切れを迎えるとともにしみじみしてしまう。 だけども、多くの方が絶賛する工藤の出す料理の描写には全然そそられませんでした。そりゃあ、おいしそうだなァとか思うんですが、そこまで食欲に火を点けられないというか。美食にあまり興味をもたない性質だからでしょうか。食いしん坊だったらこの作品を別の角度から楽しめたのかもしれないですね。 敢えて野暮なことをいってしまうと、「殺人者の赤い手」と「七皿は多すぎる」には「ありえねー!」と突っ込みを入れてしまいたくなる箇所が散見されましたし、全体的に想像と推理の矛先が腑に落ちないところも多々見受けられまして。話としてはうまくオチがついていても、個人的に納得できないというか、それは穿ちすぎなんじゃないかね、と。ラストの「魚の交わり」の真相とか、特にそうですね。なんというか、そうなんだろうな、と読者を思わず肯かせてしまうほどの真実味がないといいましょうか。 「家族写真」はその点についてはうまいこといってるように思います。この本のなかでも更に地味ですけど、これが一番好きです。 2006.06.11 Sunday 17:33
なみだ特捜班におまかせ!─サイコセラピスト探偵 波田煌子 / 鯨統一郎
『なみだ研究所へようこそ!』に続くシリーズ第2弾。 波田煌子の常識から逸脱したとぼけた発言がすごすぎる。よく考えると、これだけはずした絶妙な会話を描ける鯨氏がすごいことに、前作では気づかなかった。ちょっと常人とは思えませんね。常人だったら作家として成功してるしてないはともかくコンスタントに作品を出し続けたりできませんよね。 そして今回も冴えわたる期間限定ネタ。ほんとに十年後には確実に一般的でなくなってそうなものもいくつか。 はあ? ぼくは魔邪のように憤った。 とか、 紺野と高橋の中間ぐらいの顔つき とか。唐突にこんな言い回しが挿入されるので、ちょっと一瞬なんのことか認識するまでに時間がかってしまう。 前作との違いといえば、舞台が警察の特捜班に移ったのに伴って、解決する事案がすべて殺人事件、それも度を超えて変質的だったり猟奇的だったりすることくらい。比較的真っ当な(とはいえ、後半はかなり自棄になってますが)推理に対して、煌子が驚愕のサイコセラピー(?)で謎解きをする、というパターンは同じ。 でも、煌子の過去が少しずつ明らかになってきているようで・・・そこだけはシリアスタッチへの萌芽だったりするのでしょうか。 次作の舞台は「学習塾」だそうで。今作ラストで「日常の謎」のほうが似合うという宣言通り。 2006.06.08 Thursday 19:01
優しい音楽 / 瀬尾まいこ
表題作を含めた三つの短編をあつめた本。恋人たちの日常における非日常っていったらいいんですかね、そんな感じです、いずれも。ま、テーマは恋愛そのものではなかったりしますけど、これは恋愛モノに分類しちゃっていいように思います。ダメでしょうか。 ネタバレして困るほどのネタはほとんどないのですが、あらすじを書いちゃうと興を削ぐ気がするので、感想のみ、以下に。 「優しい音楽」 恋愛モノとされているような作品はほとんど読んだことがないので、この話が他と比べてどういう特徴を持っているのか解りませんが、こう、ありそうなこと、ありえなさそうなこと、よくわかんないけど実際そうなっちゃうとそうなっちゃうのかもしれないようなこと、の配分がうまいこといってると思いました。 「タイムラグ」 不倫とか浮気とか、人によって捉えかたが違うので、この話に対して嫌悪感を持つ人も多かったりするのだろうか。すれ違ったり、シンクロしたり、事情があったり、それを隠したり。というような人と人との間の微妙な感じをさらりと、さりげなく提示されてしまったような気にさせられた。登場人物は本当はそのとき、何を考えていたか、というようなことはどうでもよくて、それがとにかく印象的だった。 「がらくた効果」 佐々木さんをがらくたと称してるくだりはなかったのに、このタイトルってちょっとひどくないですかね。 人との出会いで人は変わるね、というよくある主題を、ひとひねりした設定で、感じよく読ませてくれる。それだけかよ、って思ったりはする。けど、それは三編すべてにいえることでもあるし、この何気ない「何もなさ」から透き通ってくる感覚は稀有でもある(ような気がする)。 2006.06.06 Tuesday 20:08
東京バンドワゴン / 小路幸也
読み始めてしばらくして往年の「月曜ドラマランド」っぽいなー、と思っていたのですが、巻末に、 あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ とあったので、少なからずその辺を意識して書いてる可能性もあるわけですね。というか、直接的には「寺内貫太郎一家」のオマージュなんでしょうけども。 設定としては、明治から続く古書店に、四世代が同居する──頑固な祖父、その息子は「伝説のロッカー」、孫は不倫相手との間に産まれた子だったり、シングルマザーだったり。しかも語り手は亡くなった祖母。 このリアリティのない設定に対し、ストーリーも全く現実味なし。悪人ゼロ、とにかくすべてが丸くおさまる。ご都合主義っていえばそれまでだし、そこを許せない人もかなりいるんだろうなァ、と思う。 連作短編ということで、「日常の謎」系ミステリのテイストが強かったりするわけですが、読後に残るのは「家族愛」のみなので、ミステリ的な期待をして読んではいけません。むしろ、どれだけミステリであるというような設定であっても、解説や帯文がそう強調していたとしても、小路さんは「ファンタジー」的な部分に長けている人であって、その「ありえなさ」を全肯定できないと、つまんないのです。 『Q.O.L』や『HEARTBEAT』にも出てきましたが、この本にも「超有名芸能人」が登場しますし、なんかもう笑っちゃうくらいな設定もまた愛せないかたには、小路作品と反りが合わないと思います。どれだけ内田裕也の顔しか浮かばなくても、それも一興なのです。 2006.06.01 Thursday 21:12
寡黙な死骸 みだらな弔い / 小川洋子
ひんやりとした感触と、透きとおった瑞々しさをおぼえる文章が描き出すのは、そのタイトルにあるように「死」と「弔い」。 棄てられた冷蔵庫の中で窒息死した子ども。幼き日にひとときだけ母親だった女。不倫相手にナイフでのどを切り裂かれた呼吸器内科医。鞄職人に胸をえぐられた歌手。老人の傍らで息絶えるベンガル虎。 それぞれの短編の絡まりあっているのだけれど、濃密な自意識の奔流によってある意味で隔絶された人々の孤独をかえって強調しているようにみえた。 人間の危うさ、陰の部分の惨めなまでのうつくしさを垣間見させてくれる、素敵な一冊だった。 |
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