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松本隆/風街図鑑~風編~ (JUGEMレビュー »)
オムニバス, 原田真二, 薬師丸ひろ子, 松田聖子, 近藤真彦, 太田裕美 1曲ごとに寄せられた本人コメントが面白い。思い入れの濃淡に思わずほくそえんでしまう。 RECOMMEND
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2006.03.27 Monday 21:02
たまご猫 / 皆川博子
「春の滅び」はそのタイトルの通り、デカダンスを漂わせた逸品。こういうのばっかりだとイヤですが、たまに読むなら好きです。解説でこの話の作風を「おんな赤江瀑」と評されているのですが、赤江氏はこんなのばっかり書いてるんでしょうか。それはそれで気になる存在ですね。 「水の館」は倒錯的な趣きが興をそそります。描かれない部分から溢れだす妖しい響きに魅せられる。 あらすじを抜き書きするのが難しい。この妖しさを言葉にするのも難しい。それぞれが異なった種類の危うさを秘めた短編集。設定や展開がラストに至って分解する感覚は、これまで他の作家では味わったことがない、異界の極致。長編やミステリについては、勿論、また違った魅力があるでしょうし、まだ知らぬ皆川氏の世界を楽しみにしつつ、その深みに溺れたいと思います。 2006.03.25 Saturday 23:53
家守綺譚 / 梨木香歩
わたしたちの知るそれとは異なった条理が、確かに息吹いているのを感じられる。不思議ではあるけれど、その物語に、とても馴染み深い心地よさをおぼえる。これまでの梨木作品とは風合いの異なっているけれども、やはり氏の世界観の奥行きに違いはない。 『村田エフェンディ滞土録』にも登場した綿貫が主人公。彼は、亡くなった友人が住んでいた家に、ひとり管理がてら住み込みはじめる。彼が交流するのは、亡くなったはずの高堂。そして、犬のゴロー。隣に住むおかみさん。庭に植わっているサルスベリ、などが魅力的に描かれている。 彼岸と此岸のあわい、この世にあらざるもの、本来なら言葉を持たぬものと交わる綿貫の姿は飄々として、濃密な話ながら、端正な文章もあいまって、とてもあっさりとした読後感で、意外でした。時に深い裂け目から覗く世界も、決して恐ろしいばかりでなく、いとおしさをも抱かせてくれる。 さらりとした爽やかさと、何気ない深みを味わえる逸品です。 個人的には、長虫屋の謎めいたキャラクタと、ゴローの愛らしさがたまらなかったです。仲裁犬・・・想像しちゃいますね、とりなしているゴローの姿。 2006.03.24 Friday 06:28
CANDY / 鯨統一郎
普段はミステリ畑の鯨氏。この作品はSF。その時点で、これを鯨初めの一冊にするにはリスクが大きすぎたのかも。 いや、別につまらなかったとかそういうわけじゃないんですけども、ネット界隈でもこの本を受け入れられるか否かで真の鯨ファンを別つともいわれるくらいの作品、とか評されていまして。 まぁ、ダジャレのオンパレード、シュールすぎる展開はある意味、清涼院流水に通じるものがありましたし、万人に受け入れられる類の話でもないことだけは確かであります。 なんつーか、昭和から平成にかけての固有名詞ないしはそれをもじった名称がこれでもか、と出てくるので、10年後に読んだら意味不明だろうポイントも散見されました。2001年に上梓されて、すでに5年の月日が経っていますが、今はまだ元ネタを判別できましたが、果たしていつまでそれが通用するのか、いまいち解らないです。 2006.03.21 Tuesday 21:22
偶然の祝福 / 小川洋子
不思議な透明感に貫かれた物語たちの佇まいに、思わぬところで心が惹かれてしまった。川上弘美は解説において、小川洋子の作品を「失われたものたちの世界」と呼ぶのだが、まさに、過ぎ去っていった、今はもうここにいないもの、それらの記憶の感触を追い求めたかのような文章が連ねられている。 「失踪者たちの王国」 理由もなく、前触れもなく、日常生活から抜け出ていった人々へと馳せられた思いと寂寥感が浸透してくるよう。 「盗作」 この筆致でなければ成立しないであろう、絶妙な均衡が保たれた一編。 「キリコさんの失敗」 代償を支払うことでしか得られぬもの、かけがえのない宝物をふと思い出させてくれた。 「エーデルワイス」 個人的にはこの本でいちばん好き。妄執にとりつかれた男は滑稽でありながら、どこか聖性をも湛えている。 「涙腺水晶結石症」 本当に必要なものは、適切なタイミングで適切な人のもとへと巡ってくる。偶然とも、必然とも、奇跡とも呼ばれるけれど、そのことは皆が知っている。 「時計工場」 現実であって、現実でないような。 「蘇生」 乱された私のなかの秩序が回復する・・・そのとき、その私にとってよすがとなる言葉は、振り返れば他愛のない、無意味にも等しい記号に過ぎない。しかし、それなしに今の私は存在し得ない、この世に身体と精神をつなぎとめる決定的な楔であった。 2006.03.19 Sunday 17:27
卵の緒 / 瀬尾まいこ
ありふれた設定、特別なことは何ひとつ起こらない、とてもシンプルな文章。なのに、読み終わったあと、確かなあたたかみを胸に残す。ごく普通の日常のなかに潜んでいる特別なことを切り取る鮮やかな手腕は、これがデビュー作とは思えないほど。『図書館の神様』も『天国はまだ遠く』もよかったけれど、これは短い分だけ凝縮されたものがあるからか、収録された2編とも、格別に心にしみた。 「卵の緒」 「家族」というものは特別なもののように思える。けれど、どこからどこまでが家族で、どこから先が家族でないと、線を引くことが容易い環境ばかりではない。家族だからつながっているともいえるし、つながっているものどうしを家族と呼んでいるともいえよう。この物語で描かれるつながりは綺麗ごとのように見えながら、それでも魅力的に輝く。 「7's blood」 こちらでは血のつながりをもつ異母姉弟の、心のつながりが描かれている。 七子と七生が少しずつ心を通わせていく過程に無理はなく、そしてふたりの抱えている様々な思いを垣間見せたのちに、物語は終幕する。 ラストシーンは、ただ美しい。 2006.03.12 Sunday 22:16
マリア様がみてる / 今野緒雪
「マリみて」です。コバルト文庫です。読みたいとは少しも思わなかったにもかかわらず、つい手に取ってしまいました。 シリーズ開始から10年弱、すでに20冊以上も出ているだけあって、ハマりどころはなんとなく解りました。私立リリアン女学園では、下級生と、その指導役になる上級生とを「姉妹(スール)」と呼ぶこと。生徒会の三役は「薔薇さま」と呼ばれ、それぞれ紅薔薇さま(ロサ・キネンシス)、白薔薇さま(ロサ・ギガンティア)、黄薔薇さま(ロサ・フェティダ)とも呼ばれる。確かに、こういう設定が呼び込む波乱やドラマは面白みに溢れているような気が、する、のです、が・・・。 文章というか、言い回しが微妙に拙い部分が散見されて、ちょっとつらかったです。 個人的には、コバルト文庫の女子校モノというと久美沙織『丘の家のミッキー』シリーズ、氷室冴子『クララ白書』シリーズを思い出します。それらと比べて、マリみては、ひたすら内向的な印象を受けました。シリーズの最初の一冊しか読んでいないので、断言はできませんけれども。 まず、登場人物に男性がひとりしかいないこと。それも同性愛者であって、メインキャラクタとなる少女たちにとっての完全なる「異性」としては描かれていません。 Wikipediaによると、その後も、主人公の弟と学校の教員くらいしか男性は出てこないようです。それがたとえ形式だけのものであれ、恋愛対象としての男性は出てこず、少女たちの濃やかな関係性が構築されていくのみ。 勿論、外部に向けてひらかれた物語が、内向する物語より優れているなんて思ってはいませんが、女子校というただでさえ閉塞感を漂わせた場所を舞台にして、10年の間コンスタントに作品を発表し続けられるというのは、すごいです。 あと、女子生徒にも同性愛者である登場人物がおり、時代の移り変わりを感じます。BLに走っている今のコバルトゆえでしょうか。それとも、マリみてが先鞭となって、BLが普及したのでしょうか。まぁ、知ったところでどうもしないのですけども。 私の個人的な嗜好と合わないので、次作以降を追いかけることはしないでしょう。ほんとにもう、好きな人には堪えられない蜜の味なんだろうな、と思いつつ。 2006.03.09 Thursday 21:13
冬のオペラ / 北村薫
読み心地がよく、軽いタッチ。美しい情景描写は相変わらず。事件の真相からみえてくるほろ苦さもほどよく、北村さんの作品は、やはりいいです。 この作品は再読のはずですが、完全に内容を忘却していたので、まるで初読のように楽しめました。 以前読んだ際の感想として、唯一おぼえていたのは「これシリーズになるのだろうか」というもの。主人公のあゆみの父の死については軽く触れられているものの、それほど彼女の過去が明かされていないので、次の作品へのブリッジなのかと今読んでみても思うのです。そして、それだけでなく、自称「名探偵」の巫弓彦のキャラクタは一作で終わらせておくのは惜しい気がしします。でも、この作品が上梓されてすでに12年も経ちますし、なにより自称「名探偵」に相応しい事件が簡単に舞い込む状況は、確かにご都合主義っぽくもあるので、難しいのかもしれません。実際、正式に依頼を受けた事件は、収録された3つの事件のうちひとつもない、ということを考えても、やっぱりそういう部分のリアリティは失えない部分ということでしょうか。 名探偵である巫弓彦と記述者であるあゆみ、それぞれの行く末は読者の想像に委ねられているようです。 2006.03.03 Friday 22:21
ゆめこ縮緬 / 皆川博子
現在でもあり、過去でもあるような時代を背景に、ゆるやかにつながりを持つ八つの短編が、あやしさをたたえながら、退廃的な輝きを放つ。 なかでも「玉虫抄」は素晴らしかった。戸惑いに似た思いを堪えながら読み進めていく先に待つのは、鮮やかな幕切れ。季節の断片とともに、心に跡を残す。 危うく狂おしい美しさは、禁断の果実から溢れる蜜のように甘い。 前々から気になっていた皆川さんなのですが、ミステリ、時代もの、幻想小説、などなどいろいろなジャンルの作品を多く残しているので、何から読み始めようか迷っていたのでした。『結ぶ』の噂を耳にするたび読みたいという思いが募ってはいたのですが、下手に手を出せない気がして。図書館にたまたま置いてあったこの作品を手始めに読んでみて、正解だったような気がします。そこまで奇想天外なわけではなく、ほどよい濃密さに酔わせていただきました。 |
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