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2017.09.29 Friday 19:49
狩人月 / 図子慧
耽美な世界が、乾いた筆致で描き出される。ボーイズラブとは少し違うような気がする。ほとんど読んだことがないからよく解らないけれど。
「黒天使」 ほとんどエロティックな気配がしない。この本に収録されている話のなかでは一番ソフトな印象。ただ、一人死んでるけど。情念の濃さが図子作品では軽いタッチで描かれることが多いので、死に至るほど強い、ある意味ピュアな思いの夢と現の境界を往来する世界をさらりと読ませてくれる。 闇の裏社会とつながりがなく、高校生の間だけで話が完結するので後味が多少悪くても、読み心地は良い。
「暗い惑星」 図子作品ではおなじみの世羅が登場する話。世羅自体が裏社会の権化なので「黒天使」とは比べ物にならないくらい、世界観が深い。 世羅の存在が妖しすぎるので、加納とトオルが嫌々ながらも魅せられていく様も無理がない。
「めくるめく月」 この本の中で一番ノーマルな学園恋愛ストーリー。 秀才・福沢と、陸上部で記録を持つほどのランナー・壬生。福沢の壬生への想いを見抜くクラスメイトの少女・真野。 誰も死なない。福沢壬生真野の三角関係は極めて健全。 壬生が走り続けることを願って、福沢は秘められた想いを隠し抱き、そばにいることにする。
「ナイトウォーカー」 眠らないと噂され、夜ごと街を徘徊する美貌の高校三年生・不破。悟は上級生に襲われたところを助けてくれた不破に、噂とともに惹かれていく。不破が寮から出ていくところを尾行し、またもや同じ上級生から暴行を受ける。そしてまた、悟の窮地を救ったのは不破だった。しかし、その不破は闇の側の顔をしていた。 ノーマルだった悟が、禁断の世界に足を踏み入れてしまうまでを描いた一品。「狩人月」の前日譚といった位置づけのような気がする。これだけ雑誌掲載されて「狩人月」が書き下ろしって、雑誌で読んだ人は全然訳が解らないだろう。
「狩人月」 来た!耽美かつ裏社会の恐ろしさで紡がれたタイトル作品。 不破が学校や寮から姿を消して一年半、思いがけないところから不破が東京にいることが解る。 友人・宮城を助けるため、そして不破を追いかけて、悟は東京に行くことにした。 不破はすっかり異界の人になってしまっていた。ついに悟は不破と交わった。 かろうじて昼の世界に戻った悟。しかし、彼が一度味わった闇の世界の魅力は忘れることができないだろう・・・。
読み終えてみて。 耽美さは解るけれども、ボーイズラブは解らない。雑誌Cobaltで堂々と「BL特集」などとやられると、もはやメインストリートなのか。 四編Cobaltに掲載され、書き下ろしを一編加えて書籍化するというのは、もともとはコバルト文庫で出す予定だったのが紆余曲折を経てスーパーファンタジー文庫で出ることになったのだろう。どっちにせよ、ぽしゃることなく出版できたことは奇跡的なことなのかもしれない。 Comment
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