- 丹生都比売
- 発売元: 原生林
- 発売日: 1995/11
- 売上ランキング: 289616
歴史もの、時代ものが苦手な私もすぐに読みきることができるほどの中編小説。
舞台は飛鳥時代。草壁皇子が主人公。
日本史バカな私にとって、登場人物や出てくる人名や出来事は知らないものばかり。
大津皇子と比べられることが多いという主人公の名前もさっぱり聞いたことがなかった。
物語の舞台となる時代がどういう時代だったのかも知らない。
持統天皇や天武天皇などの名前ですら、聞いたことがあるというくらいで、どんな功績があったのか、どんな人物像かも知らない。
だから、紡がれた言葉を頼りに、ただひたすら物語を追いかけることに必死だった。
草壁皇子の心優しさ、弱さ、儚さは時代のうねりに呑まれてしまったのだろうか?
母である持統天皇の野心、ときには子供の命をも奪ってしまう燕のようなその力強さが大津皇子も、そして草壁皇子も死へと追いやってしまったのだろうか。
謎の少女キサ、神である丹生都比売が草壁皇子とつながる線が濃やか。
きわめてシンプルな描写に豊潤な表現であっという間に引き込まれた。