2023.11.15 Wednesday
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松本隆/風街図鑑~風編~ (JUGEMレビュー »)
オムニバス, 原田真二, 薬師丸ひろ子, 松田聖子, 近藤真彦, 太田裕美 1曲ごとに寄せられた本人コメントが面白い。思い入れの濃淡に思わずほくそえんでしまう。 RECOMMEND
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2006.02.09 Thursday 21:34
神様 / 川上弘美
愛らしい虚構の数々に、思わず顔がほころんでしまう。壺をこすると出てくるコスミスミコ、くま、河童、叔父の幽霊、人魚、梨の精、えび男くん。非日常のなかから覗くふとしたそれらの息遣いが、とても生々しくもある。 やわらかくて飄々とした筆致が心地よく、そして心があたたまるようなやさしさとせつなさを残して消えていく物語は、また他の作品と異なった味わいで、川上さんの芸達者ぶりを再確認するのでした。 2005.12.08 Thursday 21:27
蛇を踏む / 川上弘美
条理と不条理が溶けあった、不思議なものがたりがみっつ。 「蛇を踏む」 蛇を踏んだヒワ子の家に、女のかたちをした蛇が暮らしはじめる。「わたし、ヒワ子ちゃんのお母さんよ」そういって、食事の支度をする。ヒワ子の勤め先の数珠屋のコスガさんとニシ子さん夫婦の家にも蛇がいるという。 ある日、蛇はヒワ子に問いかける。「どうして蛇の世界に来ないの」、と。 蛇という異物との生活に馴染んでしまうけれど、蛇の世界へ行くという決心はつかない。主人公はどっちつかずの宙吊りの状態のまま物語は終わる。 文庫版のあらすじには「若い女性の自立と孤独を描い」ているとあるけれども、ちょっとそれは穿った見方ではないか。 私たちの日常に含まれている、訳の解らない、言葉ではうまく表せないものに働きかけるような、そんなものがたり。 「消える」 出だしからふるっている。 このごろずいぶんよく消える。 なかなかパンチのあるつかみである。「蛇を踏む」もそうだけれど。 舞台となる世界は、ほんの少し、いや、かなり奇妙である。その奇妙な世界で、ある家族の長兄が消え、その婚約者だった女は次兄の嫁として迎えられる。しかし、嫁は縮んでしまい、実家に戻すこととなる。 家族というものの不思議さ、その呪縛。それはとても強く、ときに人を守り、拒絶する。しかし、それは確固としたものではない。変わっていく。形を変えていく。歪んだりする。滅んだりする。そのあやふやさのなかで生きている。 「惜夜記」 なめらかに、鮮やかに変転する景色。 19の断片どうしはつながりをもっていたり、いなかったりする。 ストーリー性は低いが、味わい深い。イメージを喚起する文章を追うよろこびで満たされる。 振り切れた作品で、こういうのばっかりになると辛いけれど、好きです。 2005.11.25 Friday 23:08
物語が、始まる / 川上弘美
川上弘美さんの本を初めて読んでみました。 「センセイの鞄」が話題になったので、てっきり恋愛小説の人だと決めつけていましたが、違った。 確かにこの短編集のなかにも恋愛を扱っているものがあるけれども、読み終わってみて心に残るのは、恋愛ではない感じ。 どれもとても短い話で、とても個性的な、印象的な設定だったり、小道具が出てきたりする。日常的な普通の人々の暮らしを描いているのだけれど、非日常というかファンタジックなものが内包されている。 「物語が、始まる」 男の雛形を拾い、育てる女。雛形は成長していく。女には恋人がおり、彼を部屋に呼んで雛形と会わせるが、それからふたりの仲はうまくいかなくなり、別れてしまう。そして、雛形と女の生活が終止符を打つまでの様子を描いている。 『アルジャーノンに花束を』の展開と重なるところもあるのだそうです。そういわれると確かに、と頷ける。 女の感情の変化も、必要最低限の言葉で、かつ飄々とつづられていて、なかなか面白く読めました。 「トカゲ」 幸運を呼ぶ「トカゲ」を手に入れた主婦たちのお話。 なんだろう? 若干ホラーっぽさを感じたわけです、私は。川上さんは女性同士のけんかや悪口などを、「トカゲ」というものをクッションにして表現したかった、というようなことをどこかのサイトで見たんですが(曖昧でごめんなさい)。 抜きんでることを好まず、ひたすら同質的であること。他者にも同質性を要求すること。人間関係がはらんでいる緊張感を、巨大化しつづける「トカゲ」の異様な姿が体現しているかのよう。 こわかったです、ほんとに。 「婆」 まり子は見知らぬ婆に手招きされ、家に上がりこむ。遠慮しながらもいつのまにか食事をし、酒を飲んだ。婆は死んだ者の名と命日とその日の天候をかまぼこ板に書き、忘れないようにしていることが解る。そしてまり子は台所で「穴」を見つけて・・・。 このお話もまた、とても不思議。この本に収録されているなかで解らなさが一番激しかった。 「穴」も、婆も解らない。けれど、どこか好もしい。生と死が繰り返され、すべてのものが移ろっていく儚さ、それゆえに一瞬のふれあいをいとおしく思う気持ちを感じたりしました。 「墓参り」 先祖の墓を探して一緒に骨を入れてほしい、と死んだ父親が家を訪ねてきた・・・と、姉が突然、墓探しをすると言い出した。姉妹は先祖の墓を探すため、父親宛の手紙の差出人の住所へと向かう。そこでさまざまな出来事が起こる。 彼岸と此岸のボーダーがなくなっちゃいましたよ! ということで、死者が登場するし、お姉さんはシャーマン体質になっちゃうし、最後には話の整合性を無視した場面転換までもなされてしまう。 こういう霊的なお話は、小説ならではの醍醐味だな、と思います。だって映像化できるわけもないし。ラジオドラマならできるかもしれないけど。短編にもかかわらず、訳の解らなさが充満していて、好きです。 |
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