読書・観劇記録、音楽メモを中心とした備忘録ブログです。
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松本隆/風街図鑑~風編~ (JUGEMレビュー »)
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pal@pop (JUGEMレビュー »)
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ケミカルなんだけどナチュラル。一度聴いたら病み付きになる名盤です。
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蒲公英草紙―常野物語 / 恩田陸
蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)
蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 518
  • 発売日: 2008/05/20
  • 売上ランキング: 159836

 

この物語の主演は、聡子様だ。語り手は、峰子。

聡明で美しく、ときに不思議と示唆的な言葉を放つ、聡子様。

病弱で二十歳まではもたないだろうと医師に診断された聡子様。お屋敷の中の部屋から出ることができないほど弱っているときもあるものの、体調が良いときにはお屋敷の外へ出て、集落の子供たち相手に話を聞かせてやるまでになった。

峰子の回想録という形式で進められるのだから、語り手イコール主人公であることは確かだ。聡子の兄・廣隆との淡い恋のようなものも描かれているけれど、年老いた終戦記念日の峰子を今もなお照らしているのは聡子の存在を基盤とした人々とのエピソードなのだ。

特殊な能力を持つ春田一家の活躍は、必要最低限だけど、しみじみと効いてくる。春田家の息子・光比古が聡子様を『しまって』いて、それを人々に響かせるシーンは切ない。

 

しかし、すべては過去の出来事である。長生きしていろんなものを見聞きし、経験した峰子の「現在」まで歩んできた道が蒲公英草紙のみを残してかき消されてしまうのは、やりきれない。しかし、そうやって様々な背景と出来事は記憶されることも、記録されることは稀である。確かにあったことが、影も形もなくなることは、残酷なようでいて当たり前のことである。だからこそ、膨大な過去の人々の営みを描いたほんの僅かな例外がもてはやされる。一部が全部の代表になってしまって、それ以外は完全に忘れ去られてしまう。

フィクションとはいえ、本書は留めておきたかった過去の市井の人々の生活があった。そういう事実を辛うじて峰子の存在が証明している。槙村家や集落の人々がかつて存在していたことを、峰子は誰かに話しているだろうか。家族を戦争で亡くし、残された子供と孫に語り継ぐだろうか。蒲公英草紙を手に取る新しい時代の人はいるのだろうか。

現実でも、日記などが残されている旧家の明主や農家の人の生活が伝え残されている場合がある。けれど、そういった文化がやってくる前に生きた人々の思いや日常はもはや、窺い知ることができない遠いものとなってしまった。

無常の切なさを描いた話といえば、梨木香歩の『海うそ』を思い出した。やるせない時代の流れを感じる点は共通する。

 

常野一族もこんなやりきれない思いを抱いたりしているのだろうか。

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光の帝国―常野物語 / 恩田陸
光の帝国―常野物語 (集英社文庫)
光の帝国―常野物語 (集英社文庫)
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 535
  • 発売日: 2000/09
  • 売上ランキング: 20126

 

長らく読みたいと思っていた『常野物語』シリーズの第一弾。

ミステリというよりはファンタジー。出てくるキャラクタが魅力的です、とにかく。連作短編なので、一つのお話にしか出てこない者も、複数の物語に出てくる者もいるけれど、常野一族の世界観につながっている感じがとても愛おしいです。

常野の一族は、それぞれ異なった不思議な能力を持つ人々である。梗概には「穏やかで知的で、権力への志向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々」とある。

ものごとを『しまう』能力を持つ春田一家。『裏返す』ものと戦う暎子。長命で『つむじ足』の持ち主、二百年以上も先生をして子供を見守ってきたツル先生。封印されていた距離や時間を超える能力が再び解かれた、亜希子。

他にもまだ常野一族の密かな活躍が十個の短編に描かれている。

個人的にはツル先生に惹かれます。『手紙』の寺崎がツル先生に執着しているとどこからか知って、「うん、わしはいつも居るよ、どこにでも。わしはいつもみんなを待っとるから。又どこかで会うだろう。ずいぶん探してくれてたようだから、ちょっと出てきてみたよ」と告げるその懐の深さ。

ちょっと出てきてみたよというお茶目さ。そして、確かにツル先生に教わっていないけれど先生を探しているというだけで、先生が待っている「みんな」の中の一員に加えてくれる。なんとあたたかなことか!

常野物語のシリーズ続編でツル先生の活躍を読みたい。『蒲公英草紙』には出てこないし、『エンド・ゲーム』は未読だけど出てこなさそうだし。出てきたらそれはめでたいのだが。

とにかく、常野物語の世界観に再び浸りたいと思うのでした。

 

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ブラザー・サン シスター・ムーン / 恩田陸
ブラザー・サン シスター・ムーン
ブラザー・サン シスター・ムーン
  • 発売元: 河出書房新社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2009/01/23
  • 売上ランキング: 255264
 

久々に読んだ恩田陸。ていうか文芸作品自体読むのはすごく久しぶり。専門書斜め読み新書濫読が続いていたからなぁ。

同じ高校から同じ大学へと進んだ男ふたり女ひとりの三人の、それぞれの物語が交錯することなく、語られていく青春ストーリー。
大学は著者が通った某大学を舞台にしている・・・というか、その大学に在籍していた三人のモノローグなのか。

それにしてもあっさりとするする読めてしまって、もっと奇をてらった感じも欲しかったかも。でもそういうのが読みたければほかの恩田作品を読めばいいじゃんと一人突っ込みしてしまう。恩田さんは多作なかたなのでこういうのもありなんだとは思う。
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ユージニア / 恩田陸
ユージニア
ユージニア
  • 著者: 恩田 陸
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2005/02/03
  • 売上ランキング: 18,203
  • おすすめ度 4.16

毒薬入りジュースによって家族を全員失い、ひとり生き延びた青澤緋紗子という盲いた美しい孤高の少女。そして、幼いとき事件を目撃した満喜子が綿密に取材して書き上げた「忘れられた祝祭」。事件を知るものが見た現実が語られていく・・・。

一気に読みきる時間がなかったもので、ちょっとずつ小分けにしながら長期にわたって読み終えました。
先日読んだ恩田作品「Q&A」と共通している点がありまして、それは、多くの人々が死んだ事件について、直接・間接の関係者たちが語っていくという形式です。
「Q&A」と「ユージニア」はそれほど出版された時期が離れていないので、ちょっと続けて読んでしまったことに軽く後悔。これはこれで充分に魅力的なお話なんですけどね。
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Q&A / 恩田陸
Q&A
Q&A
  • 発売元: 幻冬舎
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2004/06/11
  • おすすめ度 3.76

冬のある祝日、昼下がり。多くの客で賑わう郊外のショッピングセンターで起こった出来事。多くの死者と負傷者。様々なかたちでその出来事とかかわった人々の言葉は、それぞれの生活と事件の重なりあいを証言していく。
「実は、特別な場所などどこにもないということが図らずも証明されてしまったんです。日常で事件は起きる。私が特別な場所だと思って出掛けていったところも、当事者にとっては、家であったり職場であったりして、彼らの日常の場所だった。いつも必ず帰ればそこにあると思っていた家というものが、絶対的なものではないということを知ってしまった」

多くの人が、この作品を「怖い」と評している。でも、私は恐怖よりむしろ、自分の中にある様々な部分がすくい取られてしまう心地よさと座りの悪さを感じた。苦いやりきれなさを滲ませるそれぞれのクエスチョン・アンド・アンサーは、虚構だからこその凄まじいリアリティを放っていていて、重い。その重さは確かに、恐怖と紙一重なのだけれども、私にとってはとても馴染み深いものだった。
引用したレスキュー隊員の言葉は、いつ頃からか、私の頭の中にいつもあった不安の理由そのものであるように思えて仕方ない。

個人的には恩田陸のこれまでの作品のなかでベストかもしれないです。でも、ちょっと他の作品と路線が違うので、比較しようがない気もしますが。

これ以降はネタバレも含みますので、ご注意ください。
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