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松本隆/風街図鑑~風編~ (JUGEMレビュー »)
オムニバス, 原田真二, 薬師丸ひろ子, 松田聖子, 近藤真彦, 太田裕美 1曲ごとに寄せられた本人コメントが面白い。思い入れの濃淡に思わずほくそえんでしまう。 RECOMMEND
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2019.05.12 Sunday 11:01
チョコレートコスモス / 恩田陸
梗概には、「少女たちの才能が、熱となってぶつかりあう! 興奮と感動の演劇ロマン」と紹介されている。 確かにメインキャストは二十歳そこそこではありながら天才的な実力を持つ女優・響子と、大学に入ったばかりで芝居を始めたばかりだけれど想定外の演技と発想力で周囲を驚かせる飛鳥のふたりだ。 でも、飛鳥を団員として迎えた劇団〈ゼロ〉の一員であり、座付きの脚本家を目指す巽、小劇場出身の売れっ子脚本家・神谷も飛鳥の化けっぷりを目の前にして驚く、飛鳥の驚くべき芝居が認められていくところを見届ける役割を充分に魅力的に果たしている。
飛鳥は、芝居をしたいというモチベーションが特になく、ただ、「舞台の上の、暗がりの向こう」に「何かがあると思うんです。見たことないけど、何か凄いものがあそこにあって、それを見るためには、あそこの上に立つしかない。そう思って、ここに来ちゃったんです」と語る。 その「何か」の一端に、触れることになる、ストーリー終盤のオーディションでの響子と飛鳥。 名プロデューサー芹澤の変則的なオーディションにも、飛鳥は最終的には物怖じせず臨んでいく。
物語の幕切れでタイトル『チョコレートコスモス』がなぜそうなったのかが描かれている。 芝居のオーディションをテーマにしている作品なので、これまでの恩田作品にありがちだった解りづらいオチだったらストレスがあるなあ、と思っていたものの、その点は杞憂に終わった。ちゃんと結果が示されていて、その上、未来を期待させてくれるような楽しい終わりかただった。
あとがきにも触れられている続編『ダンデライオン』は、連載していた雑誌の休刊で宙ぶらりんになってしまっている。飛鳥の更なる成長、壁を乗り越える様子を早く読みたいと強く思う。 2019.04.28 Sunday 23:14
エンド・ゲーム―常野物語 / 恩田陸
常野物語シリーズの第三作目。 短編集だった第一作目の『光の帝国』に収録されていた「オセロ・ゲーム」の登場人物・暎子と時子が主役にすえられた長編。 常野一族の予備知識は必要ないとはいえ、それがどういう存在なのかは知っておいたほうが楽しめるかも。ちなみに『蒲公英草紙』とは全くニュアンスの異なる、SFサスペンスです。
何が起こるか解らない、どう話が展開していくか予想がつかないので、ドキドキし通しで読み進めていきました。常野一族とは何か、という根本的な意味さえ揺らぐような部分もあったりして、ハラハラするところもありました。 『裏返さ』なければ、『裏返され』てしまうという設定がアクション性が高くて、そういうシーンが少ないとはいえ、かっこいい物語を下支えしているなあと感心しました。
常野物語はまだ続きます、という文庫版あとがきに記された言葉に、無条件に喜んでしまうのですが、それから十年、まだ新作は出ていません。調べたところ、連載もされていません。『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞をダブル受賞したり活躍はしているし、創作活動も活発なまま作家生活を送っていられるのですが、常野物語シリーズはなかなか出てこないのです。常野の一族のいろんな話をもっと読ませてほしい。時間は永遠ではないので、出来る限り多く常野物語を上梓してほしいと思うのであります。 2016.11.03 Thursday 20:18
蒲公英草紙―常野物語 / 恩田陸
この物語の主演は、聡子様だ。語り手は、峰子。 聡明で美しく、ときに不思議と示唆的な言葉を放つ、聡子様。 病弱で二十歳まではもたないだろうと医師に診断された聡子様。お屋敷の中の部屋から出ることができないほど弱っているときもあるものの、体調が良いときにはお屋敷の外へ出て、集落の子供たち相手に話を聞かせてやるまでになった。 峰子の回想録という形式で進められるのだから、語り手イコール主人公であることは確かだ。聡子の兄・廣隆との淡い恋のようなものも描かれているけれど、年老いた終戦記念日の峰子を今もなお照らしているのは聡子の存在を基盤とした人々とのエピソードなのだ。 特殊な能力を持つ春田一家の活躍は、必要最低限だけど、しみじみと効いてくる。春田家の息子・光比古が聡子様を『しまって』いて、それを人々に響かせるシーンは切ない。
しかし、すべては過去の出来事である。長生きしていろんなものを見聞きし、経験した峰子の「現在」まで歩んできた道が蒲公英草紙のみを残してかき消されてしまうのは、やりきれない。しかし、そうやって様々な背景と出来事は記憶されることも、記録されることは稀である。確かにあったことが、影も形もなくなることは、残酷なようでいて当たり前のことである。だからこそ、膨大な過去の人々の営みを描いたほんの僅かな例外がもてはやされる。一部が全部の代表になってしまって、それ以外は完全に忘れ去られてしまう。 フィクションとはいえ、本書は留めておきたかった過去の市井の人々の生活があった。そういう事実を辛うじて峰子の存在が証明している。槙村家や集落の人々がかつて存在していたことを、峰子は誰かに話しているだろうか。家族を戦争で亡くし、残された子供と孫に語り継ぐだろうか。蒲公英草紙を手に取る新しい時代の人はいるのだろうか。 現実でも、日記などが残されている旧家の明主や農家の人の生活が伝え残されている場合がある。けれど、そういった文化がやってくる前に生きた人々の思いや日常はもはや、窺い知ることができない遠いものとなってしまった。 無常の切なさを描いた話といえば、梨木香歩の『海うそ』を思い出した。やるせない時代の流れを感じる点は共通する。
常野一族もこんなやりきれない思いを抱いたりしているのだろうか。 2016.10.25 Tuesday 19:38
光の帝国―常野物語 / 恩田陸
長らく読みたいと思っていた『常野物語』シリーズの第一弾。 ミステリというよりはファンタジー。出てくるキャラクタが魅力的です、とにかく。連作短編なので、一つのお話にしか出てこない者も、複数の物語に出てくる者もいるけれど、常野一族の世界観につながっている感じがとても愛おしいです。 常野の一族は、それぞれ異なった不思議な能力を持つ人々である。梗概には「穏やかで知的で、権力への志向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々」とある。 ものごとを『しまう』能力を持つ春田一家。『裏返す』ものと戦う暎子。長命で『つむじ足』の持ち主、二百年以上も先生をして子供を見守ってきたツル先生。封印されていた距離や時間を超える能力が再び解かれた、亜希子。 他にもまだ常野一族の密かな活躍が十個の短編に描かれている。 個人的にはツル先生に惹かれます。『手紙』の寺崎がツル先生に執着しているとどこからか知って、「うん、わしはいつも居るよ、どこにでも。わしはいつもみんなを待っとるから。又どこかで会うだろう。ずいぶん探してくれてたようだから、ちょっと出てきてみたよ」と告げるその懐の深さ。 ちょっと出てきてみたよというお茶目さ。そして、確かにツル先生に教わっていないけれど先生を探しているというだけで、先生が待っている「みんな」の中の一員に加えてくれる。なんとあたたかなことか! 常野物語のシリーズ続編でツル先生の活躍を読みたい。『蒲公英草紙』には出てこないし、『エンド・ゲーム』は未読だけど出てこなさそうだし。出てきたらそれはめでたいのだが。 とにかく、常野物語の世界観に再び浸りたいと思うのでした。
2010.09.08 Wednesday 23:51
ブラザー・サン シスター・ムーン / 恩田陸
久々に読んだ恩田陸。ていうか文芸作品自体読むのはすごく久しぶり。専門書斜め読み新書濫読が続いていたからなぁ。 同じ高校から同じ大学へと進んだ男ふたり女ひとりの三人の、それぞれの物語が交錯することなく、語られていく青春ストーリー。 大学は著者が通った某大学を舞台にしている・・・というか、その大学に在籍していた三人のモノローグなのか。 それにしてもあっさりとするする読めてしまって、もっと奇をてらった感じも欲しかったかも。でもそういうのが読みたければほかの恩田作品を読めばいいじゃんと一人突っ込みしてしまう。恩田さんは多作なかたなのでこういうのもありなんだとは思う。 2006.05.02 Tuesday 21:40
ユージニア / 恩田陸
毒薬入りジュースによって家族を全員失い、ひとり生き延びた青澤緋紗子という盲いた美しい孤高の少女。そして、幼いとき事件を目撃した満喜子が綿密に取材して書き上げた「忘れられた祝祭」。事件を知るものが見た現実が語られていく・・・。 一気に読みきる時間がなかったもので、ちょっとずつ小分けにしながら長期にわたって読み終えました。 先日読んだ恩田作品「Q&A」と共通している点がありまして、それは、多くの人々が死んだ事件について、直接・間接の関係者たちが語っていくという形式です。 「Q&A」と「ユージニア」はそれほど出版された時期が離れていないので、ちょっと続けて読んでしまったことに軽く後悔。これはこれで充分に魅力的なお話なんですけどね。 2006.01.18 Wednesday 22:40
Q&A / 恩田陸
冬のある祝日、昼下がり。多くの客で賑わう郊外のショッピングセンターで起こった出来事。多くの死者と負傷者。様々なかたちでその出来事とかかわった人々の言葉は、それぞれの生活と事件の重なりあいを証言していく。 「実は、特別な場所などどこにもないということが図らずも証明されてしまったんです。日常で事件は起きる。私が特別な場所だと思って出掛けていったところも、当事者にとっては、家であったり職場であったりして、彼らの日常の場所だった。いつも必ず帰ればそこにあると思っていた家というものが、絶対的なものではないということを知ってしまった」 多くの人が、この作品を「怖い」と評している。でも、私は恐怖よりむしろ、自分の中にある様々な部分がすくい取られてしまう心地よさと座りの悪さを感じた。苦いやりきれなさを滲ませるそれぞれのクエスチョン・アンド・アンサーは、虚構だからこその凄まじいリアリティを放っていていて、重い。その重さは確かに、恐怖と紙一重なのだけれども、私にとってはとても馴染み深いものだった。 引用したレスキュー隊員の言葉は、いつ頃からか、私の頭の中にいつもあった不安の理由そのものであるように思えて仕方ない。 個人的には恩田陸のこれまでの作品のなかでベストかもしれないです。でも、ちょっと他の作品と路線が違うので、比較しようがない気もしますが。 これ以降はネタバレも含みますので、ご注意ください。 |
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