読書・観劇記録、音楽メモを中心とした備忘録ブログです。
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ケミカルなんだけどナチュラル。一度聴いたら病み付きになる名盤です。
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裏庭 / 梨木香歩
裏庭 (新潮文庫)
裏庭 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 724
  • 発売日: 2000/12/26
  • 売上ランキング: 13387

再読です。梨木さんの本で読了したなかで、最初かその次に読み終えた一冊です。 『からくりからくさ』と『裏庭』を続けて読んだのを覚えています。

ファンタジーのようで、児童文学といっても差し支えないようでもある。描かれる世界は不思議なキャラクタの魅力に溢れていて、それぞれに軽やかな妙味がありながら、重みがあって面白い。

 

「真実が、確実な一つのものでないということは、真実の価値を少しも損ないはしない。もし、真実が一つしかないとしたら、この世界が、こんなに変容することもないだろう。変容するこの世界の中で、わしらはただわしらの仕事をもくもくと続けるだけじゃ。それがわしらの『職』なのだから。変容する世界に文句をつけるより、その世界で生きることをわしらは選ぶよ」

 

これはとある登場人物が主人公である照美に放った言葉。現実世界から「裏庭」という異世界に入り込んでしまった照美が成長し、気づきを得るという物語ですが、世界観がとても緻密です。現実と異なる秩序でできている世界のルールに直面し、葛藤したり受け入れたりを繰り返す照美の冒険は過酷ともいえるもの。

 

照美の母、祖母、父、バーンズ家のレイチェル、夏夜、綾子のおじいちゃんジョージら、現実を生きる者にとって、レイチェルの妹レベッカと、照美の双子の弟・純、ふたりの故人の不在はとても大きなものでした。照美が試練を潜り抜けて、家族のもとへ戻り、純の死以来、いびつになっていた家族の形を整えることになりました。そして、レイチェルとジョージは「裏庭」の世界へと入ることになる。ふたりにとって「裏庭」の世界がどういう意味を持つのか、何が待ち受けているのか、それは描かれることはありません。

 

読んだのは二回目でしたが、意外と内容は忘れていて、物語の大枠しか記憶には残っていませんでした。

ソレデとカラダ、スナッフ、タムリンなど、愛すべきキャラクタのことも覚えていませんでした。でも、とても心を温めてくれる存在でした。

思い返すことができて幸せな気分になれたので、読み直してみてよかったです。

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この庭に 黒いミンクの話 / 梨木香歩 須藤由希子
この庭に―黒いミンクの話
この庭に―黒いミンクの話
  • 発売元: 理論社
  • 発売日: 2006/12/13
  • 売上ランキング: 456690
ちょっと解りづらい短編絵本でした。
『からくりからくさ』の世界で起こった物語なのですが、それの意味が私には解りづらい。
マーガレットの娘ミケルの内的世界での出来事、と片付けてしまってよいのでしょうか?
ミケルの年齢がいくつに設定されているのかが解らず、女の子やミンクが出てくる世界での年齢設定と、終盤、マーガレットと与希子が登場する現実世界での年齢は同じなのか? と疑問がわく。
内的世界でのミケルは充分に大人にみえる。現実世界は幼くみえる。
なんとなく腑に落ちない物語でした。
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岸辺のヤービ / 梨木香歩 小沢さかえ
岸辺のヤービ (福音館創作童話シリーズ)
岸辺のヤービ (福音館創作童話シリーズ)
  • 発売元: 福音館書店
  • 価格: ¥ 1,728
  • 発売日: 2015/09/09
  • 売上ランキング: 116200
タイトルロールのヤービ、かわいいです。いや、ヤービ族、ベック族ら、マッドガイド・ウォーターに住む小さな住人、あらゆる種族がいとおしい存在として描かれています。
人間との付き合いかたなど、「借りぐらしのアリエッティ」を思い出しつつ読み進めていきました。

語り手はどこか梨木さんご本人を想起させるウタドリさん。ウタドリさんの語り口は温かく、とても優しい。
ほのおの革命家・デューの存在から伝わってくるメッセージ性が、ただ穏やかで甘口なだけではない感じを読み手に伝えてくれました。
この作品はシリーズ第一弾ということで、次の作品の予告が最終ページに置かれています。
どこかムーミンに世界観が似ているかもしれません。名前がパパ・ヤービ、ママ・ヤービなどというところが。
ヤービの健康的な男の子っぷりについこちらも微笑んでしまいます。キジバトに乗って憧れの空を飛んだときの素直な喜びを表現していてかわいいです。
何かの幼虫だというヨンの存在も凄まじいものを感じます。何年も孵らずにいるというのも不思議で、いつか何者かになるのかと想像ができないくらい謎めいています。

とにかく、次作には、ウタドリさんの勤務先の学校の生徒たちがヤービに出会うような展開が用意されているようです。期待してます。
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蟹塚縁起 / 梨木香歩 木内達朗
蟹塚縁起
蟹塚縁起
  • 発売元: 理論社
  • 価格: ¥ 1,404
  • 発売日: 2003/02
  • 売上ランキング: 163501
梨木香歩さんの絵本です。木内達朗さんの抽象性の高い朴訥とした絵が素敵です。油絵なのでしょうか?
文章量は短い、とてもシンプルなお話ですが、主人公の「とうきち」の人柄が浮かび上がってくるように描かれています。
なぜ塚というものができたか、その由来を語っているだけなのですが、不思議な余韻と共にページを閉じると心に物語が染みてきました。
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りかさん / 梨木香歩
りかさん (新潮文庫)
りかさん (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 562
  • 発売日: 2003/06
  • 売上ランキング: 128799


『からくりからくさ』に登場する蓉子の幼いころ、「りかさん」と出会った顛末と、様々な人形や精霊の声や念を聞いたり見たりする。
そんな中編小説と、短編小説『からくりからくさ』の後日譚である「ミケルの庭」の二話を収録しています。

『からくりからくさ』と『りかさん』、どっちを先に読んだほうがいいのか、お勧めする順番はと問われたら迷ってしまいます。蓉子にとってのりかさんの存在の大きさが解るという意味では、『りかさん』をはじめに読んだほうが良いのかもしれません。

りかさんとおばあちゃん、ようこの会話は生き生きとしていて、とても楽しかったり含蓄があったり。人間以外の人形たちの、たとえばアビゲイルのエピソードは胸に迫るものがありました。それを言えばりかさんも人形なんですけども。

「ミケルの庭」は、『からくりからくさ』の登場人物、マーガレットの生まれて間もない女の子・ミケルが主役。ありふれた日常のなかを通り過ぎる嵐が行き過ぎるのを待つのは、大変厳しいものでした。ミケルが健やかに育ってほしいと願ってしまいます。
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からくりからくさ / 梨木香歩
からくりからくさ (新潮文庫)
からくりからくさ (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 680
  • 発売日: 2001/12/26
  • 売上ランキング: 41819


多分、初めて読んだ梨木作品。十年以上経って何となく手に取りたくなって、一週間ほどかけて読み返してみました。
「ここにはないなにか」を探そうとしないで。ここが、あなたの場所。
というのが帯文の惹句。 物語終盤、個人的に惹かれた台詞を引用します。
「ねえ、これからもきっと、こうやって、僕たちも、何度も何度も、国境線が変わるようなつらい思いをするよ。何かを探り当てるはめになって、墓を暴くような思いもする。向かっていくんだ、何かに。きっと。小さな分裂や統合を繰り返して大きな大きな、緩やかな統合のような流れに。草や、木や、虫や蝶のレベルから、人と人、国と国のレベルまで、それから意識の深いところも浅いところも。連続している、唐草のように。一枚の、織物のように。光の角度によって様々に変化する。風が吹いてはためく。でも、それはきっと一枚の織物なんだ」
この言葉は、他の梨木作品にも通じる気脈のようなものを現しているように思えて仕方ないのです。余りに鋭い。
四人の若い女性たちの共同生活、自然の持つ力、それを手作業で作品にうつしていくこと。
魅力的な人物――ただ字義通りに美しかったりはつらつとしているだけというわけではなく――の一年を描いたこの物語は、人間の業の深さを丁寧に深く描いている。
機織、染色、庭の植物を食べる、など、自然の暴力的なまでの力とスケールの大きなうねりの中で、それでも日々を淡々と過ごしている様子は、不思議なまでに「正しい」と言い表したいものである。
終盤はドラマティックで、希望に満ちたものでありながら、どうしようもない苦みも含まれている。生きることのどうしようもなさに抗うこと、「変化する」ことに流されること、ともに同じことを別の表現で伝えようとしているのではないか。

彼女たちのその後を描いている『りかさん』所収の「ミケルの庭」も、りかさん本編も読み返したくなりました。
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海うそ / 梨木香歩
海うそ
海うそ
  • 発売元: 岩波書店
  • 価格: ¥ 1,620
  • 発売日: 2014/04/10
  • 売上ランキング: 106071

派手さはなく、地味だけれど胸を確かに打つ一作。時は昭和初期、ただただ丁寧に、南九州と同じくらいの緯度にある修験道のためにひらかれた島の自然と人間の営為が描写されている。
大学で人文地理学を研究する主人公・秋野と、地元の青年・梶井のふたりの調査の道行きが物語の中心となっている。
植物や動物、自然現象、古き先人から伝わり失われつつある習俗。タイトルにもなっている「海うそ」とは蜃気楼のような自然現象のことである。
淡々としかし美しい筆致で描かれているのは、変わりゆく島の変遷、見えない時の流れに消えてしまわないよう記録しようとする秋野の見聞きした出来事である。
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雪と珊瑚と / 梨木香歩
雪と珊瑚と
雪と珊瑚と
  • 発売元: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 価格: ¥ 1,620
  • 発売日: 2012/04/28
  • 売上ランキング: 32636

シングルマザー珊瑚とその娘・雪がさまざまな人々との出会いを経て思いもよらず、カフェを開店することになって・・・という親子の成長物語。

正直にいえば、話がうまく行き過ぎているような気もする。カフェ開店に至るまで、そしてそれからの経緯について。でも、要所で生々しく禍々しくもある存在や出来事が描かれていて、それがただのお洒落なサクセスストーリーとは一線を画している。
珊瑚とその母についてのくだりは、非常にナイーブで奥深く、紋切り型では決してない複雑なものを内包していることを感じさせる。珊瑚の中学時代のスクールカウンセラー藤村や、前のアルバイト先の店長桜井さんとその妻雅美、そのバイト先で同じくアルバイトで同僚の美知恵、元夫の泰司・・・。そして母の保子。登場場面は少ないながらも、彼らは印象的かつ重要な登場人物である。勿論、くらら、由岐、那美ら主要キャラクターも、重要なのだけれども。
確かに、致命的だったり、徹底的だったりするミスなども起こらずに話が進み過ぎている。それを許せるか否か読み手次第。
私は違和感を感じながらも許容できます。
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冬虫夏草 / 梨木香歩
冬虫夏草
冬虫夏草
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,620
  • 発売日: 2013/10/31
  • 売上ランキング: 43683
『家守綺譚』の続編です。新進作家の主人公綿貫征四郎の身の回りに起こること(竜やら鬼やら河童やらとの交遊)を書いた家守綺譚に続いて、綿貫の旅路と交遊する人間にあらざるモノとのうねるような出会いが描かれている。
前作同様、綿貫の執筆した物語がそのままこの作品の体をなしている。
今回は愛犬ゴローの永い不在に目撃情報を得て、彼を捜し求めて山河を旅することになった。行方不明になったゴローの聡明さが、直接登場せずとも手に取るように解る。誰しもに愛され、敬われるその姿が、読後、心に残った。
イワナの夫婦が営む宿に泊まってみたい、という誘惑もありながら、ゴローがいとおしくてたまらない様子がさりげなくけれども確かに読み手に伝わってくるのだ。
イワナ夫妻とゴロー、ふたつの求めたものと触れ合えた綿貫。さぞや本望だろう。
ゴローを主役にしたスピンオフ作品も見てみたいと思わせる。綿貫の作品として記されるのであろうから、彼にゴローの日常が想像できるかどうかが不安であるが。

物語の章に、登場する植物が冠されているのも、そちらの方面に疎い私には新鮮で滋味深い。
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丹生都比売 / 梨木香歩
丹生都比売
丹生都比売
  • 発売元: 原生林
  • 発売日: 1995/11
  • 売上ランキング: 289616
歴史もの、時代ものが苦手な私もすぐに読みきることができるほどの中編小説。
舞台は飛鳥時代。草壁皇子が主人公。
日本史バカな私にとって、登場人物や出てくる人名や出来事は知らないものばかり。
大津皇子と比べられることが多いという主人公の名前もさっぱり聞いたことがなかった。
物語の舞台となる時代がどういう時代だったのかも知らない。
持統天皇や天武天皇などの名前ですら、聞いたことがあるというくらいで、どんな功績があったのか、どんな人物像かも知らない。 
だから、紡がれた言葉を頼りに、ただひたすら物語を追いかけることに必死だった。

草壁皇子の心優しさ、弱さ、儚さは時代のうねりに呑まれてしまったのだろうか?
母である持統天皇の野心、ときには子供の命をも奪ってしまう燕のようなその力強さが大津皇子も、そして草壁皇子も死へと追いやってしまったのだろうか。
謎の少女キサ、神である丹生都比売が草壁皇子とつながる線が濃やか。
きわめてシンプルな描写に豊潤な表現であっという間に引き込まれた。
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