読書・観劇記録、音楽メモを中心とした備忘録ブログです。
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媚薬 / 図子慧
媚薬 (角川ホラー文庫)
媚薬 (角川ホラー文庫)
  • 発売元: 角川書店
  • 発売日: 2000/03
  • 売上ランキング: 1464202

 

 

マレーシアのラン園で謎の男に出会ったときから、フリーライターの磯良のまわりでは、次々と人が死んでいく。美青年、茅島に仕掛けられた妖しい罠。調べ始めた磯良の前に、異様に太った男が現れた。茅島に恋する啓子は、インターネットで手に入れた媚薬を彼に密かに飲ませるが・・・。一方、街中でも眠るように死んでいく若者が急増していた。忍び寄る自然の恐怖を描く、美しくもおぞましいファンタジック・ホラー。

これが文庫版の裏表紙に書かれた梗概。ドラッグを裏で扱うペットショップでアルバイトしている一人暮らしの高校生、龍司が出てこないのが不思議。とにかく主役級で活躍する怖いもの知らずの龍司と、磯良が合流したときのちょっとしたバディ感がよろしいです。

それにしても啓子は媚薬にすがってまでして茅島を落として妊娠して婚約まで持ち込んだのに、ねェ。

日埜戸の謎の巨漢っぷりと、様々な死体がグロテスク。ホラー文庫から出版されているものの、話の持っていきかたがミステリ風でもある。

最後までどんなふうに話が転がっていくのかが全く読めないのも一興。

茅島の性癖があからさまになるシーンや、茅島が啓子の罠にはまった休み中のオフィスでのラブシーンなど、エロティックな場面もふんだんに盛り込まれていて、退廃的なイメージを醸して素敵です。

磯良が完全に外部から探偵役をしているわけではなく、啓子と一夜を共にしていたり、ドラッグを口にしてしまい必死に吐き出したものの、体に影響を及ぼすことがないかと不安感を抱いていたり、一貫して当事者でいるところもたくさんの謎とともにストーリーを盛り上げてくれている。

それにしても、啓子がもし媚薬を使わなければどうなっていたのだろう? とか考えてしまいます。日埜戸がいるということは、会社内の誰かがきっと獲物になっていたのじゃないかと思います。ああ、媚薬、ドラッグって怖いって改めて感じ入ります。

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ふしぎの国のミャオ / 図子慧
ふしぎの国のミャオ (集英社文庫―コバルトシリーズ)
  • 発売元: 集英社
  • 発売日: 1989/04
  • 売上ランキング: 2397685

 

SFなのかファンタジーなのか学園ラブコメなのか。どれにもあてはまるけれど、どれにもあてはまらない。

学校に来なくなった中学のクラスメイト・トオルを何とか出席させようと、トオルの幼なじみ楓子とクラス委員の音実、光圀が山の中の家まで訪問しにいくことになる。そして、トオルの家に辿り着く前に、楓子は雷に打たれてしまう。気づくと、金色のライオンが目の前に現れる。心の中の言葉で会話することができるそのライオンの名前はミャオ。心臓のネジが壊れてしまい、運命の相手を探し出して、そのネジを借りて直さないと、このまま放っておくと心と体がべつべつになってしまうと告げられる。そしてミャオはトオルの体を借りて現れることを知る。トオルはミャオでいるときの意識があるのだという。ミャオは楓子の星辰運行図を見せ、運命の相手が中学に入ってから出会い、今年の春からさらに近づいてきたことを教える。

ミャオは水が苦手で、トオルが濡れていると姿を現すことができない。楓子の涙さえもダメなのである。そして、ミャオが姿を現したとき、楓子は仮死状態になってしまうことが解る。

ミャオが楓子に憑依した状態で、運命の人のあたりをつけて光圀が同じネジを持っているか確認したが、運命の人ではなかった。その後、トオルがアメリカにある天才児を集めて才能をのばすプロジェクトに参加するため、渡航することを楓子は知る。

全校参加のクラスマッチでソフトボールをしている最中、楓子の心と体は離れてしまった。ミャオが応急処置でそのヒゲを楓子の心と体を結んでくれて、ヒゲをたどって体に戻ろうとした。しかし、体に戻ることができない。

家族やクラスメイトが、病院の治療室の前で待っていたところ、楓子はやってきた担任の乾先生が運命の人であることを察知した。

楓子がトオルに会いたいと言っていたことを知ると、おさななじみでもある由行はトオルを探しに夜の街へと向かった。トオルは見つかったが、由行は自分より年上の男たちに「こいつの手足をしばって海に放りこめ」と命令する。もちろん、楓子やミャオがいることを頭の中で把握しての発言ではあるが。そして、いざというときに、トオルはミャオの姿に変わった。水は苦手だったミャオは由行を助け出すが、元の世界に帰ることになる。ミャオは楓子に、誰の心にもぴったり合うネジがついた心臓を送り、体は元通りになった。きっと楓子に会いにいくから、そのときまでトオルの友だちを止めないでと言う。トオルの人生のすべてのなかで、彼が触れたがったのは楓子だけだと話す。

 

ミャオが優しいので泣きそうです。トオルの非道っぷりは、彼が孤独だけれど、ミャオという存在がいてくれてこその不良道なのだと思う。楓子もトオルを気にかけるようになって、乾先生とお姉ちゃんが結婚するというニュースを知らせた際には、花束を贈ってくるくらい人間らしい面も見せてくれる。あれ、乾先生って楓子の運命の人だったんじゃなかったっけ? ミャオの心臓があるからもう運命の人のネジはいらなくなっちゃったんですかね。運命の人だからといって恋愛関係になるわけではないそうなので、義兄妹という関係でもアリなのか。

トオルが孤独ではなく、ミャオと楓子が少なくともいることをどこかで感じて、カタストロフィを防いでほしいな。

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狩人月 / 図子慧
狩人月 (集英社スーパーファンタジー文庫)
狩人月 (集英社スーパーファンタジー文庫)
  • 発売元: 集英社
  • 発売日: 1997/04
  • 売上ランキング: 1667029

 

耽美な世界が、乾いた筆致で描き出される。ボーイズラブとは少し違うような気がする。ほとんど読んだことがないからよく解らないけれど。

 

「黒天使」

ほとんどエロティックな気配がしない。この本に収録されている話のなかでは一番ソフトな印象。ただ、一人死んでるけど。情念の濃さが図子作品では軽いタッチで描かれることが多いので、死に至るほど強い、ある意味ピュアな思いの夢と現の境界を往来する世界をさらりと読ませてくれる。

闇の裏社会とつながりがなく、高校生の間だけで話が完結するので後味が多少悪くても、読み心地は良い。

 

「暗い惑星」

図子作品ではおなじみの世羅が登場する話。世羅自体が裏社会の権化なので「黒天使」とは比べ物にならないくらい、世界観が深い。

世羅の存在が妖しすぎるので、加納とトオルが嫌々ながらも魅せられていく様も無理がない。

 

「めくるめく月」

この本の中で一番ノーマルな学園恋愛ストーリー。

秀才・福沢と、陸上部で記録を持つほどのランナー・壬生。福沢の壬生への想いを見抜くクラスメイトの少女・真野。

誰も死なない。福沢壬生真野の三角関係は極めて健全。

壬生が走り続けることを願って、福沢は秘められた想いを隠し抱き、そばにいることにする。

 

「ナイトウォーカー」

眠らないと噂され、夜ごと街を徘徊する美貌の高校三年生・不破。悟は上級生に襲われたところを助けてくれた不破に、噂とともに惹かれていく。不破が寮から出ていくところを尾行し、またもや同じ上級生から暴行を受ける。そしてまた、悟の窮地を救ったのは不破だった。しかし、その不破は闇の側の顔をしていた。

ノーマルだった悟が、禁断の世界に足を踏み入れてしまうまでを描いた一品。「狩人月」の前日譚といった位置づけのような気がする。これだけ雑誌掲載されて「狩人月」が書き下ろしって、雑誌で読んだ人は全然訳が解らないだろう。

 

「狩人月」

来た!耽美かつ裏社会の恐ろしさで紡がれたタイトル作品。

不破が学校や寮から姿を消して一年半、思いがけないところから不破が東京にいることが解る。

友人・宮城を助けるため、そして不破を追いかけて、悟は東京に行くことにした。

不破はすっかり異界の人になってしまっていた。ついに悟は不破と交わった。

かろうじて昼の世界に戻った悟。しかし、彼が一度味わった闇の世界の魅力は忘れることができないだろう・・・。

 

読み終えてみて。

耽美さは解るけれども、ボーイズラブは解らない。雑誌Cobaltで堂々と「BL特集」などとやられると、もはやメインストリートなのか。

四編Cobaltに掲載され、書き下ろしを一編加えて書籍化するというのは、もともとはコバルト文庫で出す予定だったのが紆余曲折を経てスーパーファンタジー文庫で出ることになったのだろう。どっちにせよ、ぽしゃることなく出版できたことは奇跡的なことなのかもしれない。

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丘の家のミッキー 6 / 久美沙織
丘の家のミッキー〈6〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
丘の家のミッキー〈6〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
  • 発売元: 集英社
  • 発売日: 1986/07
  • 売上ランキング: 480254

 

おかみき六冊目。

なんとこれでひとまず『丘の家のミッキー』は終了する予定だったそうです。いや「一応」終了する程度のことで、再開する意欲は満々のようですが、ひとまず区切りをつける、ということだったみたいです。その後、七冊目からは高校編が始まります。

 

うららとのぎくしゃくした関係に堪えられない未来は、苦手だけどうららと仲の良いみづゑを理解したいと思い、会うことにする。

何故うららと親しい関係をもっているか知りたいなら、『ミッキー』に乗せろというみづゑ。もう時間は早くないし、なんとなく嫌な予感を引きずりながら、二人きりで夕暮れに海へと出ることにする。

みづゑが中学一年のとき、朱海との結婚を勝手に申し込んできたのが小学生だったうららだった。朱海の代理でうららがみづゑと結婚式をささやかに挙げ、誓いのくちづけを交わしたのだという。

そんな話をしたのち、海が荒れはじめ、ふたりの操縦もあまりうまく通じ合うことができなくなり、桟橋に懐中電灯を振りかざす朱海を確認する。そして、桟橋に突っ込んでいってしまう・・・。

意識を取り戻したらそこは病室。顎にひびが入って、左腕が折れてしまったのだという。二週間話すことができなくなった。『ミッキー』は壊れ、朱海は事故に巻き込まれ、目に怪我をしてものが見えなくなってしまった。

朱海の病室に、一人で訪れた未来は、くちづけを朱海とかわす。

未来も回復し喋れるようになり、朱海も無事目が見えるようになり、ふたりとも退院した。その後、ふたりきりの海岸で、朱海と未来の父との出会いや、未来が幼稚園の劇で天使役をやりたかったけれどできなかったことなど話をした。

やがて受験シーズンが訪れ、華雅学園の入試に杉丸とともに挑んだ未来。受験前にソロリティ―の方々から校章を渡してくれ、奮起するふたり。試験中に出会った笙子という落ち着いた凛々しい少女とも仲良くなれそう。

華雅の合格発表を一般より早く教えてもらい、試験が満点で合格だった未来。杉丸も笙子も合格していることを知らされ、卒業式の予行演習を舞台袖から見学されることを許される。

そこで、校長さまはご挨拶で、外部の人は理解しがたく悪魔の誘惑も多く、それを避けるために華雅でできた友人だけが永遠だというようなことをおっしゃる。思わず、「違います!! それは、違います!!」と叫んでしまう未来。華雅の内部に凝り固まってしまうことは、こちらが軽蔑している人に実は軽蔑されているのではないか、されるべきなのではないかと語りかける。

そのスピーチのあと、麗美さまは率先して拍手をしてくださり、それからほとんどの方が立ち上がって拍手してくれた。

そして、待ち合わせた朱海に、華雅の入学を断ってしまったことを告げる。ヨット『エンチラーダ』を借り、使えるようになったこと、「いっそ、高校なんて行くのやめちゃえば?」「花嫁修業すればいいじゃない?」というふざけ半分の言葉を朱海は言う。

未来は、森戸南の試験を受けるべく、ツル先生に電話をかけ、貸しはいつかきっと返してもらうぜ、などと軽く脅されてしまう。

 

未来は予想通り、森戸南に入学することになりそう。華雅に戻ってしまうともはや華雅の優等生ではいられないだろうから、これがベターな選択だと思われる。

それと、みづゑ絡みでこれで二度目のヨット事故が起きてしまったことにびっくり。最初はなんとか死にそうにはなりながら、なんとか怪我もなしに済んだけれど、今回は思いっきりひどい怪我をしてしまった。朱海も。みづゑがお見舞いにも来ないのは、やっぱり責任を感じていて、さらに朱海にまで怪我を負わせてしまった引け目があるから、合わせる顔がないからなんだろうな。

未来と朱海の関係の進展も、遠距離通学の華雅に行くより、近場である森戸南に通ったほうがうまくいくだろうし。ひとまず終わり、というにはあまり終わった感がしないのは、リアルタイムで読んでいない、十巻で完結することを知っているからなんだろうなァ。とはいえ、あと四巻。ページ数も後半戦は少なくなっているし、思い切って物語を堪能したい。

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丘の家のミッキー 5 / 久美沙織
丘の家のミッキー〈5〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
丘の家のミッキー〈5〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
  • 発売元: 集英社
  • 発売日: 1986/04
  • 売上ランキング: 410584

 

おかみき五冊目。

朱海とともに華雅学園の文化祭に行くことになった未来。道中、うららが華雅幼稚園を受けたことを知る。

華雅に男の人同伴で訪れることで、変な噂が立ってしまうだろうことを認識しながらも、未来は何も悪いことはしていないと、胸を張っていようと決意する。しかし、朱海はそこを察して別行動をとることに。

そして、ソロリティ―のバザー会場で過ごしていると、演劇部が公演中の講堂の照明が故障して、麗美さまがそれを直しに舞台の上の上に行ってしまった。それに朱海も麗美さまを助けようと舞台機構のなかに入ってしまったのだ。舞台の上の上の通路がひしゃげて切れて、演劇続行中の舞台に麗美さまがずり落ちて登場してしまう。朱海の手が捕まえて宙吊りになっているのだが、通路が舞台に近かったので、演劇部長・西本が麗美さまの腰を抱いてうまく降ろしてくれた。

この一件で朱海の存在は華雅に英雄として轟いてしまった。朱海の本意ではないにもかかわらず。

 

ヨット・レースに参加することになった「ミッキー」。短い練習期間で、くじ引きで出場者ふたりを決めることになる。しかし未来は直前に風邪をひいて高熱を出してしまい、見学が確定してしまった。お見舞いに来た朱海も、本人と麗美さまの写真を飾る未来にぎこちない不機嫌さを露わにして帰ってしまう。

レースの当日、乗ることになったのは尚志とうらら。会場の葉山マリーナは人でごった返している。そこへなんと麗美さまが現れる。未来がお手紙で知らせたこともあってだろうが、実はそれだけではなく、別の理由もあってレースに訪れたのだった。

なんと、麗美さまが、朱海を想いながら袖にされるという現場を、未来は目の当たりにしてしまった。

肝心のレースは、十九位という成績を飾ることができた。

ところどころで現れるみづゑと衝突を繰り返す未来。うららに何故みづゑの味方で彼女を慮った言葉ばかり言うのか、と問うと、つまらないことで敵や味方に分けて人付き合いしたくない、自分の価値観を相手に押し付けることはしたくない、と告げる。つい非難してしまうと、うららは気軽に未来を見捨ててしまうようにして去っていった。ただのケンカなのか、うららが未来に匙を投げてしまったのか。次巻に続く!

 

いい加減に気づいてやれよ、未来。

そう声をかけたくなる。

いたるところで好意を仄めかしているというのに。でも、そんな未来だからこそ魅力的とはいえ、限度があるぞ。

朱海と麗美さまと未来の三角関係(!)という自覚も未来にはほんの欠片にもない。もし知ったらひっくり返るぞ。朱海の麗美さまへの思いの矢印がない以外は、麗美さまは未来を可愛く想っているし、未来は麗美さまと朱海を別の次元で好き。

朱海は耐える日々を送っているなァ、と労いたい気分になる。

 

おかみき全十巻読書も折り返し地点を迎えました。未来の成長した部分とまだ子供の部分、どれも魅力的だ。大人しいお嬢様とはいえ、言いたいことは言ってしまうし、ケンカもする。華雅に通っていなければ、案外お転婆な娘さんに育っていたのではないかと想像します。どんなかたちで物語が終わるのか、寂しいような待ち遠しい気分でいっぱいです。

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丘の家のミッキー 4 / 久美沙織
丘の家のミッキー〈4〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
丘の家のミッキー〈4〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
  • 発売元: 集英社
  • 発売日: 1986/01
  • 売上ランキング: 345063

 

おかみき四冊目。

名門大学受験合格実績をつくるために、森戸南の高等部に進学してくれと、教頭から直々に頼まれた未来。確かに森戸南に愛着を感じ始めてきたところなのだけど、華雅学園では校長先生が入学をほぼ確約してくださっている。

そんな未来が教師たちに依怙贔屓されているとクラスメイトの一部が、体育のバスケットボールの最中に意地悪を仕掛けてくる。うららが上手くとりなしてくれたからよかったものの、それがなければどうなっていたことか。

また、受験勉強に不安を抱く未来は、前の席に座る杉丸に、授業をテープに録音してもらい、復習をしようと本気で思っていた。だが、教師がぞんざいかつ高圧的な授業が、PTA会長や校長らにばれるのではないかと恐れ、結果的に一泡吹かせてしまうことに。

学校での生活も大事だが、未来にとっては今の面子でヨットを楽しめるのが限られていると、肌で感じている。だから朱海のアイディアで大会に出ようというプランが持ち込まれ、南部のおじいさんにコーチをしてもらい南部さんの息子のヨット『エンチラーダ』も借りて、本格的に練習をできるようになって嬉しいのだ。

しかし、悩ましい事態にも陥っている。朱海の誕生日の翌日にある香道の免許皆伝のお披露目が、華雅の学園祭とかさなってしまったのだ。違う学校に通っていながら、学園祭でソロリティ―の主催するバザーへの出品を許されているのだ。どちらに行けばいいのか、直前まで決めかねている未来だったが・・・。

 

まず、ツル先生がうららと朱海の姉・西在家の志乃と結婚していて子供までいることにびっくり。志乃が十九歳のときに結婚したって、出会いは森戸南女学館で教師と教え子の関係だったのだろうか。

朱海のアプローチに未来が気づかないのも、やきもきする。ストレートに朱海が言葉で告げるまで、朱海と未来はくっつかないのかもしれない。華雅の存在が、麗美さまへの慕情が、男性といい仲になることにブレーキをかけているように思える。華雅の学園祭で、次巻に何かが起こるらしいので、少しはふたりの関係に進展がみられるといいのだけれど。

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丘の家のミッキー 3 / 久美沙織
丘の家のミッキー〈3〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
丘の家のミッキー〈3〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
  • 発売元: 集英社
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  • 売上ランキング: 296433

 

おかみき三冊目。

夏休みのある一日。校長先生に呼ばれて久々に華雅学園を訪れた未来。先生は未来に高校入試はしてもらうものの、入学を確約してくれたのだった。そして、なんとその日は登校日で、トコら久々の顔にあわせることになり、なんとソロリティ―でお茶をすることができたのだ。しかも誰にも内緒で麗美さまのお宅に泊めていただいた。久々に会う麗美さまのうるわしさに華雅愛を再確認する。

一方、湘南に戻ると、テレビの取材で留学生バートに密着をしたいという、胡散臭い内田という未来の父と旧友だと名乗るディレクターが、ボートハウスで友人紹介などの撮影を強行したのだ。そして、その撮影中にバートに頬っぺたながらもファーストキスを奪われ、それが放映されてしまう。

ところでバートが取材を受けたのは、憧れの原節子に会わせてくれるといわれたからだという。紹介されたのは偽物だったけれど、その直後、街で見かけたのは本物の原節子だったのかもしれない。

夏の終わり、ホタル狩りを企画し、麗美さまと加奈子さまとトコを招待したら、加奈子さまの運転手として名門大学の学生二名もついてきて、ただならぬ仲のご様子。加奈子さまを想い人とするトコと杉丸はショックを隠し切れない。

バーベキューパーティーのあとに怪談で肝試ししながら、ホタル狩りしに行き、最後に花火を楽しんだ。

夏休み明け、森戸南女学館に久々に登校した未来は、朱海やバートのファンたちに追い回されてズタボロにされてしまう。そして朱海の親衛隊長・稲子の美しさに魅了され、お手紙のやりとりをしたいと申し出て、なんとか未来の存在を納得させてしまった。

始業式に出た後、未来は教頭に呼び出され、あることを告げられる・・・。

 

あらすじというには拙すぎるが、これだと朱海が出てこないけれど、本当は結構登場してます。すいません。なぜか今回は朱海の存在が省きやすかったのです。

原節子は二年前に九十五歳で亡くなったのですが、今作で姿を現したのは果たしてあの伝説の女優だったのだろうか。それにしても、三十二年前に描かれた小説が扱った人物の神秘性が損なわれぬまま、つい二年前までひっそりと生活し続けていたことが凄いと思う。

あとは、テレビのディレクター内田の業界人ならではの胡散臭さ満点っぷりが面白かった。三十年前とはいえ、ここまで業界ズレしてる人なんて今どきいるのかなァ。

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丘の家のミッキー 2 / 久美沙織
丘の家のミッキー〈2〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
丘の家のミッキー〈2〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
  • 発売元: 集英社
  • 発売日: 1985/01
  • 売上ランキング: 235292

 

おかみきの二巻目。

アメリカからの留学生・バートは古い邦画、特に原節子に憧れる日本人とのハーフ。朱海の家にホームステイしている。朱海がバートのためにひらいた聞香会で遭遇した、親戚のみづゑは朱海との噂を信じてあからさまに未来に意地悪してくる。うららと朱海の姉・香織さまは華雅御前とも呼ばれた華雅エンヌだったが、それゆえに卒業せずに小説家へと転身したのだという。しかし、華雅出身であることを未来が名乗ったりすると、発狂寸前になってしまうほど、華雅にいたという過去がアンタッチャブルなことになっているらしい。

そんな新しい出会いのなかで、未来の悩みは、ヨット『ミッキー』に乗るために、懸垂をできるようにならないといけないこと。人の助けなしに船体に乗れないと、迷惑をかけてしまうからだ。でも、未来は懸垂どころか腕立て伏せすら覚束ない。努力せねばと、朱海にコーチしてもらったりもした。

みづゑに、彼女の在学している聖フェリシアに合格して蹴ってみせると、ケンカついでに啖呵をきってしまったり、学校では夏期講習へのお誘いもあり、高校受験のムードも高まってきている。未来も、華雅の外部試験の過去問題をやろうとするも、なんだかんだで出来ずじまい。

ヨットに乗るには、この夏が最後かもしれないからだ。朱海たちが来年は大学受験生となるのだ。このタイミングを逃したら、ヨットを楽しめる機会が遠くなってしまう。悩ましい未来は、ヨットに乗るのだが、沖でみづゑのウィンド・サーフィンと接触し、海の中へ落ちてしまう・・・。

 

未来と朱海との距離感が少しずつ縮まっていくのが微笑ましい。とはいえ、あくまで小刻みではあるけれど。

そして、香道の聞香会の場面があるのが興味深い。香道はきっと奥深いだろうから、今後、もうちょっとフォーカスしてくれると嬉しい。

さて、未来は華雅学園に戻るのか、森戸南に残るのか、それとも外部の他の高校に!? どこになるとしてもひと悶着ありそう。早くも華雅に戻るという選択肢が一択だったはずなのに、それも揺らいできた。恋愛モノというよりは未来の成長の描写に重きを置いているおかみきだから、どう転んでも楽しいだろう。杉丸がトコの想い人・加奈子さまを慕ってしまい、華雅学園に進学しようとしているくだりも面白い。受験は実は大したことではないけれど、ある意味では人生の分岐点ともいえるので、そこをどうにか乗り越えていただきたい。未来も杉丸も朱海も。

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丘の家のミッキー / 久美沙織
丘の家のミッキー (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
丘の家のミッキー (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
  • 発売元: 集英社
  • 発売日: 1984/09
  • 売上ランキング: 844071

 

80年代コバルトのある意味での極北。藤本ひとみや新井素子、山浦弘靖などがミステリ、SFの人気シリーズを生産していくなかで、正統的な青春少女小説をヒットさせたのが久美沙織。

この『丘の家のミッキー』のあとがきのように、リアルタイムな読者とのやりとりが刻みつけられていて、その先人には後追いの読者はついていくことができない。それでも、版は重なった。

出版から二十年のちにイラストを一新して再版されたが、どれだけの反響があったのだろう。調べてみる気にはならないのでそのままにしておくが、『マリア様がみてる』のヒットに便乗して女子校の世界を描いた「おかみき」は、「まりみて」と違い、成長し、変化していく少女の世界が描かれている。まりみては第一巻だけしか読んでいないのであまり知らないのだが、何か決定的なものが違う気配を感じたのを覚えている。

氷室冴子の『クララ白書』『アグネス白書』シリーズ全四冊も、寄宿舎を舞台に、過ぎていく学園生活の中の少女のかけがえのない青春を描写し、外部の世界、男を含む大人の世界へと進んでいく物語である。

久美沙織がウェブサイトに書いた文章曰く、7、8巻あたりでそれまでの読者が離れていく決定的な物語の転換があったとのことで、それがどういうものか、確かめてみたいと思う。

 

――と、いうことで全巻揃えていながらいつか、いつか、と手をつけられずにいたおかみきを読んでいきたいと思います。これまで何度か読もうと思っても途中で諦めてしまっていたので。橋本治の『窯変源氏物語』を頓挫させているので申し訳ないのだけれど、おかみきはいつかは挑まなければならない小高い丘なのです。勿論、窯変源氏物語もですが、こちらは更に高い山だな。ブログというツールが外部に拓かれたウェブであれば、拙文を晒すのは恥かもしれない。けれど、ウェブという世界をほんの少しでも豊かにできるのであれば、忘備録ブログであっても、書き切ることができるような気がするのです。と、いうことで一巻目の感想はたたんでおきます。

 

 

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月曜日は、女神にララバイ / 図子慧
月曜日は、女神にララバイ (集英社文庫―コバルトシリーズ)
  • 発売元: 集英社
  • 発売日: 1990/05
  • 売上ランキング: 2254399

 

シリーズ第三作目にして図子慧最後のコバルト文庫。まあ、その後スーパーファンタジー文庫からは出す訳ですが。

青春ミステリといった雰囲気のある作品。

仙子が真夜中にとった「宮内に関わるな、死ぬ」という謎の電話。

宮内家は病院を経営する大金持ち。仙子の親友・青葉の母方の親戚である。病院事務長の息子・雪矢の家庭教師を請け負った透仙は、青葉の従姉である薔子に恋してしまう。また、テレパスの能力もなくなってしまった。

そして、自動車事故で薔子が怪我を負うことに。

「お前の大事な女が死ぬ。手を引け」と再度かかってきた電話は関係あるのか?

そして話は二転三転して・・・といった筋。

 

面白く読めました。まさかのミステリでしたが、図子節がきいています。シニカルでクールでファニー。

青葉は暁彦に失恋して、高柳にひょっとしたら・・・という流れもいい感じ。仙子と温海が仲睦まじい描写で終わる物語は、その次を読ませてくれるのでは、と期待しちゃっていたでしょう、この作品をリアルタイムで読んでいたなら。結果、透仙や仙子、温海、青葉らのこれからが描かれることはないだろうということも、2017年の現在の私は知ってしまっている。

コバルトで活躍し続けることも難しいし、一般文芸の世界で活動することも容易くない。

それでも、図子慧にはコバルト時代を黒歴史にしないで、それも含めて名作を生み出していってほしい。

過去作の電子書籍化で、人気に火がつくかもしれない。とにかく書き続けていって、それを出版できる環境があり続けていってほしいと思う。

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